おはようございます!
今日もAI時代に負けない営業マンを目指して勉強していきましょう!
今日のテーマは、営業マンにとって気が重い仕事の一つ、「値上げ交渉」です。
メーカーから値上げのお知らせが届くと、お客さんの顔が浮かぶ。
「この前も値上げの話をしたばかりなのになあ……」
商社の営業をしていると、そんな気持ちになることがあります。
私も新人の頃、値上げの見積書だけを持っていき、お客さんにしっかり怒られた経験があります。
今回はその失敗と、2026年に施行された「取適法」をきっかけに、価格交渉で営業マンが果たす役割を考えてみます。
仕入先は数十社。でも、お客さんから見れば商社は一社
商社には、数十社にのぼる仕入先があります。
それぞれのメーカーから値上げの依頼が来れば、対象の商品を購入しているお客さんへ説明することになります。
ところが、お客さんから返ってくるのは、こんな言葉です。
「また値上げの見積もりを持ってきたの!」
こちらとしては、前回とは別の商品、別のメーカーの話です。
「いや、今回はまた別のメーカーからの依頼で……」
そう言いたくなる気持ちはあります。でも、それで納得してもらえるわけではありません。
仕入先が何社あっても、お客さんの前に立っているのは、いつも同じ商社の営業マンです。
お客さんにとっては、仕入先の違いよりも、自社の購入費用が繰り返し増えていくことのほうが切実です。
中東情勢や為替など、複数のメーカーに共通する要因が重なると、値上げ依頼が同じ時期に集中することもあります。
こちらも苦しい。でも、お客さんはもっと苦しい。
商社が苦しいのは精神的に、お客さんはコストアップという現実が苦しい。
この認識を持たずに説明を始めると、どうしても営業側の都合ばかりが前に出てしまいます。
新人時代、見積書だけ持っていって怒られた
私が新人だった頃、値上げ後の見積書だけを持って、お客さんを訪問したことがあります。
そこで言われたのが、次の言葉です。
「根拠となる文書もなしに、はいそうですかと値上げを了承できるか!」
そのとおりです。
見積書を見れば、新しい価格は分かります。
でも、なぜ上がるのか。なぜその金額なのか。いつから変わるのか。
判断するための説明がなければ、お客さんも了承のしようがありません。
目の前の担当者自身が、上司や購買部門へ説明する立場かもしれません。
「営業マンが値上げすると言っていました」
それだけでは、社内の話も進まないでしょう。
値上げが避けられない事情はあっても、説明を省いてよい理由にはなりません。
こうした対応をしていると、「商社は右から左にモノを流すだけの楽な商売」と見られかねない。
新人時代の失敗は、営業としての説明責任を考えるきっかけになりました。
取適法で重視される、価格について話し合うこと
2026年1月、従来の下請法を改正した「取適法」が施行されました。
価格交渉に関わる変更の一つが、協議に応じない一方的な代金決定の禁止です。対象となる取引で、受注側から価格協議を求められたにもかかわらず、協議や必要な説明をせず、一方的に代金を決めて受注側の利益を不当に害する行為が禁止されました。
ただし、「値上げの依頼は、すべて受け入れなければならない」という意味ではありません。
実質的に協議し、要求を受け入れられない場合には、その理由や根拠を十分に説明することが重要です。
出典:公正取引委員会・Q134
また、商社の取引すべてに取適法が適用されるわけではありません。取引内容や企業規模などの確認が必要で、規格品をそのまま購入する取引は、原則として製造委託には該当しません。
出典:公正取引委員会・Q17
法律の適用とは別に、価格について誠実に話し合う姿勢は、日常の営業でも大切です。
ここからは、私の経験を踏まえた営業としての考え方です。
見積書に「相手が判断できる材料」を添える
値上げの説明で用意したいのは、新しい価格だけではありません。
例えば、次のような情報です。
- メーカーの価格改定案内と、値上げの理由
- 対象となる商品と、現在の価格からの変更幅
- 新価格の適用日と、対象になる注文の条件
- お客さんの購入費用に、どれくらい影響するか
メーカーの案内文を添付して終わりにせず、自分でも内容を理解する必要があります。
「原材料費の上昇」と書かれていても、説明できない点があれば、メーカーへ確認する。
分からないことを、その場の推測で埋めないことも大事です。
また、改定日までの余裕が分かれば、お客さんも予算や発注予定を検討しやすくなります。
例えば、一個当たりの値上げ幅に普段の購入数量を掛けて、月間の負担増を示す。複数メーカーの改定が重なっているなら、対象商品と実施時期を一覧にする。
こうした整理は、お客さんが社内で説明するときにも役立ちます。
誠意は、何度も頭を下げることだけでなく、相手の判断に必要な準備にも表れます。
値上げの気配があればすぐに伝える
私たちのお客さんである製造工場も、作った製品を納入先のメーカーに販売しています。
資材の仕入れ価格が上がれば、お客さんもまた。その納入先に対して値上げ交渉をしなければなりません。
数年前までは、納入先から厳しいコストダウンを求められることが多かった製造業の現場。
しかし今では「コストアップやむをえない。その代わり供給を止めないでくれ」という考え方に変わってきています。
そのため、お客さんの購買課や資材課の担当者からは、「値上げの気配があればすぐに教えて下さい」と言われています。
お客さんにも、その先の納入先へ説明し、価格を交渉する時間が必要なのです。
正式な見積書ができるまで待つのではなく、まだ確定していない情報はその旨を添えて、早めに伝える。これも、商社営業マンにできる大切な配慮だと思います。
取適法の施行も後押しになっているのかもしれませんが、以前と比べて、値上げの話に耳を傾けてもらいやすくなった実感はあります。
数年前は、話を持っていっても「断固拒否!」というお客さんも多かったですからね(笑)
ただ、話を聞いてもらいやすくなったからこそ、根拠をそろえて誠実に説明する姿勢は、これからも大切にしたいところです。
「無理です」と言われた理由を、もう一歩確認する
十分に説明しても、すぐに了承してもらえるとは限りません。
そのときは、何が難しいのかを確認したいところです。
値上げ幅が大きすぎるのか。
予算の都合で、実施時期が合わないのか。
それとも、値上げの理由がまだ伝わっていないのか。
理由が違えば、次に検討することも変わります。
例えば、発注数量や配送回数を見直すことで、費用を抑えられる余地があるかもしれません。代替品を検討できる場合もあるでしょう。
もちろん、品質や在庫負担に影響するため、簡単に約束はできません。お客さんと仕入先の双方に確認して進めます。
商社は、売る立場であると同時に、仕入れる立場でもあります。
「お客さんに断られたので、そちらで何とかしてください」
その一言で仕入先に負担を押しつけてしまえば、自分が困っている状況を、別の相手へ渡すだけです。
何が障害になっているのかを整理し、次に話し合える形にする。そこに商社営業の仕事があると思います。
まとめ|値上げの場面こそ、商社の仕事が見える
値上げの話は、何度経験しても気持ちのよいものではありません。
仕入先ごとに事情が違っても、お客さんには「また、あなたの会社から値上げの話か」と受け止められる。その苦しさもあります。
だからこそ、見積書を届けたところで仕事を終わらせない。
理由を確認し、影響を整理し、相手の事情も聞く。合意できたら、単価や適用時期をメールなどで共有して、認識の食い違いを防ぐ。
AIに資料の整理を手伝ってもらうことはできます。それでも、説明内容を確かめ、お客さんの疑問を受け止め、仕入先と調整する責任は営業マンにあります。
値上げをお願いする場面でも、「この人は、こちらの事情まで考えてくれている」と感じてもらえる仕事をしたいですね。


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